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核抑止論 (NHK 核「日本の、これから」 を見て)

(極少数ですが・・・)読者の皆様、ご無沙汰しています。

先日の8月15日の終戦記念日、NHKで放送された「日本の、これから」の視聴者討論番組に、当会の「お玉おばさん」と、九条の心ネットワークの徳岡弁護士が出演しました。

あちらや津久井弁護士のブログなどでも、色々と番組の評価や問題について議論がされていますし、先日他の「九条の会」の皆さんとお話したときにも、番組批判なども出されていました。確かに、番組の構成の問題や、問題発言もどちらの側からも多々ありましたが、忌憚のない正直な意見が表明されたのは価値があったのではないでしょうか?こうした、視聴者討論番組はどうしても消化不良になりがちなのですが、かなり踏み込んだ発言も多く、比較的見ごたえのある討論番組だったと思います。議論のスタート、国民意識の多様性のあぶり出しとしては、私はまずまず成功していたと思います。

それにしても、あの元自衛官の方のトンデモ陰謀論(反運動=クレムリンの陰謀説)は凄かったですね。もっとも、護憲派の周辺にもトンデモ陰謀論は存在しますので、これに影響されるかどうかとイデオロギーは関係なさそうですが・・・

あと、識者のコメントで、「日本武装論」の非現実性がくっきりとを浮かび上がっていたのも印象的(挑発的な言い方ですみません)でしたね。

ざっくりとした感想は簡単に以上とし、以下に番組でも結論は出なかった「の傘」論の前提となっている「核抑止論」について、少し考えてみました。

番組から明らかになった「核抑止論」に基く核武装論は、簡単に言えばこんな感じでした。

#やったら、やりかえすぞ、という均衡関係でしか、現実的には戦争を回避すること=平和を保つことが出来ない。だから、核武装した相手には、こちらも核武装するしか均衡関係は築けない。北朝鮮が核武装した以上、日本も核武装すべきだ。

端的に言い換えれば、
#核兵器は戦争を出来なくしたスーパー兵器なので、これを持つ事は最高の安全保障になるのだ。平和のためにこそ核武装が必要だ。

といった感じでしょうか?

実に面白いな~(不謹慎ですみません)と思ったのは、番組でも大学生の女性(どこかで以前に見たことがある気がするのですが、きっと気のせいでしょう・・・)が、「核は決してなくならない」「戦争の無い状態とは均衡した状態」「全ての国が核兵器を持つか、持たなければ均衡状態になる」「今の日本の状態は不均衡だ」と言っていましたが、これって凄く分かりやすい論理だなと。核均衡が平和をもたらすんだという立場に立てば、当然そうなるよな~と感じました。

皆さんなら、これにどう反論しますか?
できれば、皆さんからもご意見いただきたいですね。

で、私の立場ですが、
これまでの国際社会において、「抑止」というものの存在については、ある程度認めざるを得ないと思っています。の登場により、戦争へのハードルが高くなったのは事実だと思います。だからといって、それだけで長崎以降、が使用されなかったわけではありません。例えばアメリカは、過去に何度も兵器使用直前まで行きました。しかし、それをすんでの所で思い留まらせたのは国際世論の力も大きかった。まず、そうした複眼的な視点が必要だと思います。

そしてなによりも、この「抑止」による「平和」が、人類の目指すべき道だとは、私は到底思えないのです。「武装」こそが平和への道だという「核抑止絶対論」者にお聞きたいのは、「核保有」が「戦争抑止」の唯一絶対の方法なのですか?という事です。私自身は、そうした核抑止の存在を認めた上で、それでも核に頼らない、核を使わない抑止を構築すべきだと考えています。

で、先の大学生の方が言われた「全ての国が核兵器を持てば均衡状態(平和)になる」という言葉に、この核抑止論の問題、矛盾が凝縮されていると感じます。全ての国が核兵器を配備して、互いに睨みあっている状態が、果たして「平和」といえるのでしょうか?人類は、核に代わる安全保障の道を編み出すことが不可能だと、どうして決め付けられるのでしょうか?

この核抑止論に立って核武装すれば、自国は「平和のための核」で、他国のは「攻撃的な核」となります。しかし、この論理を認めれば、相手にとっても、日本が「攻撃的な核」を持つから、自分が「平和のための核」を持つのだという論理をも、同時に認めないといけなくなります。つまり、この論理は、相手がこちらに民族が滅亡するほどの威力を持った兵器で狙い続けることを認めることと同義で、それを「止めろ」という権利を失うことを意味します。番組でも指摘されていましたが、日本が核武装すれば、韓国や台湾が核武装したり、軍備強化に反対できなくなります。それが、本当に自国の安全保障にとってプラスなのでしょうか?

そして、決定的に欠けているのは、「核兵器は人類の存亡を左右する兵器である」という点です。核兵器は存在する以上、必ず使おうとする人が登場します。実際何度も使われそうになりました。誤射の恐れも常に付きまといます。アメリカなどの大国が、NPTで核拡散を封じ込めようとしてきたのは、広がれば広がるほど、こうした実際に使用される危険がどんどん増していく事をよく知っていたからに他なりません。つまり、全ての国が核兵器を持つ社会は、決して「平和」などではなく、何時突然訪れるか分からない人類滅亡の崖っぷちに座しているだけだと感じます。核兵器のない社会を実現するというのは、我々人類が、自らの生存をかけて克服していかないといけない人類的な課題なのです。

加えて、核兵器が人類と共存できない兵器であるということを誰よりも一番よく知っているのは我々日本人のはずです。だからこそ、この人類的課題の実現の先頭に立つ人類的責務と価値を、我々日本人は背負っているのだと思います。日本国憲法の前文に書かれているのは、まさにこの精神であり、番組で被爆者の方が、「被爆者は報復なんて考えたことがない。だからノーモアなんだ」という発言の意味はここにあります。こうした人類的な核兵器の意味、核兵器廃絶運動への日本と日本人の人類的責務の視点などが、核武装論者には決定的に欠けていると感じます。

加えて、世界の変化にも付いていけていないと感じます。
アメリカの大統領、イギリスの首相、キッシンジャーなどの多くの国防に関わった専門家たちが、ここ数年の間に一斉に「核兵器は廃絶しないといけない」と、言い出しているのはなぜなのか?核抑止論を否定するかのような言動をするのはなぜなのか?その変化の意味を考えて欲しい。

これは、この間のNPT体制の変化と密接に絡んでいる問題です。
これまでは、NPT体制で何とか認められない核拡散=危険な人たちに核兵器が渡る危険を防いで来れた。しかし、インド・パキスタン・北朝鮮と、NPTの枠外での核武装が広がり、イランの核武装疑惑も強まる。そのような中で、今一番の現実的脅威となってきているのが核テロとなっている。核拡散が進み、ロシアの核管理も疎かになり、核物質や核兵器がテロリストに渡らないように管理することが困難となりつつあるのです。これを抜本的に解決するには、もはや核兵器そのものを廃絶し、核物質を厳格に管理するようにすることしか方策がない、という結論に達したのがアメリカ自身なのです。
当面は核の傘=核抑止の効果に頼りつつも、長期的には核兵器のない世界を目指すことでしか、自国の長期的な安全保障は保てないという結論に、核保有国自身が達しているのです。この変化(チェンジ)を理解して欲しい。

もはや、アメリカでさえ、核抑止を安全保障上の普遍的な論理として採用しなくなったのだということを、核武装論者は知るべきでしょう。もはや、核武装による平和構築という論理は時代遅れなのです。

もう一つ、核武装論から感じたのは、武力均衡のみを安全保障と考える短絡性です。
この欠陥は、防衛省の武貞氏にすら指摘されていましたね。

防衛力による安全保障は、その脅威がある限りは私も認めます。しかし、安全保障とはそれだけではありません。例えば、あれだけ歴史的に戦争を繰り返してきたEU諸国間で、近々戦争が起きそうだなんて思う人はほとんどいないと思いますが、それは、それぞれが周辺国との「軍事均衡」が保たれているからでしょうか?違いますよね。

戦争を起き難くする方法は、防衛力強化以外に、非軍事的方法も含めて実は沢山あります。国連の安全保障体制を強化することも役立つ。欧州安全保障・協力機構や南米諸国連合などのような地域安全保障も役立つ。経済的に相互依存関係を深くすることも戦争を起き難くする。人的交流による相互理解を深めることも戦争を起き難くする。2国間に横たわるシコリのある問題を、徐々に解決していく。などなど、本当に色々な方法があるのです。

例えば、四川大地震に派遣された日本救助隊の献身的な働き振りと、一つ一つの命をどこまでも大事に扱う姿勢に、中国全土から感動と感謝の声が送られ、反日感情をも溶かす大きな役割を果たした(ここ)のは記憶に新しいですが、彼らの活動は、防衛力増強に勝るとも劣らない日本の「安全保障」に役立っていると思います。

この世から完全に戦争をなくすることは仮に無理だとしても、それを少しづつ起き難くする、戦争を始める方が遥かにリスクが高いので馬鹿らしくて出来ないという体制を構築する事は、不可能ではないはずです。そうした現実的で効果的な非軍事的安全保障体制を徐々に構築しつつ、同時に徐々に軍事的な安全保障の割合を軽減していく事こそ、我々の目指すべき現実的道なのだと思います。

私は、「核兵器を持ったら平和が訪れる」というのは、「非武装でいれば誰も攻撃してこない」というのと、同じ程度に「お花畑」な論理だと思います。

確かに核武装も、戦争を起き難くする方策の一つかもしれない。
しかし、番組でも識者から指摘されていたように、それはあまりにもコストが高くつく。加えて、ここで指摘してきたような、人類はそれに頼らなくてすむ事を目指さないといけない方策なのです。人類は、核兵器を作り出す程の知恵を持っています。そして、いまこそ人類が目指すべき、知恵を尽くすべきなのは、核兵器に頼らない平和構築の道なのだと信じます。その隊列に、今まさに、アメリカの大領領、イギリスの首相なども加わろうとしている。

この時に、唯一の被爆国日本が、多くの被爆した同胞の苦しみを知る我々日本人が、どちらを向いて行動することが、この人類的な価値に合致するのか?我々の子孫の生存をより保障する道なのか?という視点で考えることこそ大事なのではないでしょうか?
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theme : これからの日本
genre : 政治・経済

tag : NHK,

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はじめまして

おたま様のブログで知りました。この間のNHkの「日本のこれから」私も見ました。あの番組で一貫して出てこなかったのは、戦略論からの論議です。戦略論からみて、「核の傘」は観念の問題であり、日本の核武装論は米国が嫌うものであり全く日本の国益にならないものなのです。
孫崎享「日米同盟の正体」(講談社現代新書)を読むと、それが良く判ります。この著者が今年の3月まで防衛大学校教授(外務省国際情報局長・イラン大使も歴任)だったためか、9条の会の仲間にすすめても読んでくれません。わたしは、9条の会の戦略論からの解り易い理論書と思っています。
はじめから、若干ややこしいことを書きました。失礼。

コメントありがとうございます

林 俊成さま、

コメントありがとうございました。

>あの番組で一貫して出てこなかったのは、戦略論からの論議です。戦略論からみて、「核の傘」は観念の問題であり、日本の核武装論は米国が嫌うものであり全く日本の国益にならないものなのです。

そうですね。
黒澤さんや志方さんが、「核武装論」は、外交戦略としてあまりにもデメリットが多すぎるというお話をしていましたが、核武装論者からその視点での説得力のある反論は何もありませんでしたね。

平和論だけでなく、軍事関係、外交関係にも、護憲派は改憲派にも対抗できる論理を身につけないといけないと常々思っていますので、紹介いただいた本は、是非読んでみたいと思います。
ご紹介ありがとうございました。

No title

あの広島・長崎への悲惨な原爆投下が、もしあの時点で日本も核保有していれば起きていなかったかもしれない事ついては、どのように考えますか? 核保有しない事が全て! そうじゃ無いですよね・・・。

はじめまして

先日はお世話になりました。
管理人様について調べていて,このブログを知りました。
平和論だけでなく、外交・軍事学・戦略論まで取り上げられているレベルの高い議論がされていて驚いています。
護憲派の主張の多くが,昔からスローガンで言われてきた様な言葉の羅列で飽き飽きしていたのですが、こちらは相手の理論まで飲み込んで平和を守って行こうという強かさを感じました。
これからも時々見に来ます。

Re: はじめまして

須永様、

こんな過疎地にお越しいただき、また温かい励ましのコメントありがとうございます。
実はあんまりこちらには持論は書いていないし、ほとんど放ったらかし状態ですので恐縮です。

実は私は、理想論もとても大事だと思っています。
ただ、それを目指す方法論は、現実的かつ強かであるべしという事です。
そして、敵味方の2分論では、結局何も解決しないし多数派にはなれないと考えています。

左翼運動ご出身の護憲派の方などには、一切のブレや違いが許せない方々もいらっしゃるようですが、私は、違いを大事にしつつ、加藤周一さんがおっしるように多面的に、相手の立ち場からも含めて多角的に物事が見られる想像力を大切にしたいと願っています。無論、まだまだ未熟ですが…

須永様との関わりができた被災地のがれき処理の問題も同じです。
焼却炉の住民の立場での想像力と同時にがれき処理の遅れが復興の足かせとなっている被災地、被災者への想像力とを同時に持った上でがれき問題を考えて欲しいと、進めようとする側にも反対する側にも願っています。

もちろん科学的に見れば、あの程度の汚染のがれき処理をしてもキチンとHEPAフィルターなどを付ければ、児玉氏が仰るように周辺への漏れは極僅かであり、問題になるレベルにはなりようがないと私も思いますけどね。

ただ、それを不安に思う気持ちに蓋はできないし、政府や科学への不信が極大となっている現状ではそれも止むなしも面もあると思っています。
だからこそ、その不安を取り除けるようなプロセス導入、言い換えれば、科学的検証の民主化をこそ、行政には要求していくべきだろうと考えているのです。
それが、あのMLでの提案だったわけです。

他の方には通じない内容となってしまいましたので、私があるMLでした「がれき処理問題」の提言を、記事としてアップしておきます。

Re: No title

GAKU様、

いつもコメントありがとうございます。
管理を放置していたため、コメント頂いていたのに気が付かなくてごめんなさい。

> あの広島・長崎への悲惨な原爆投下が、もしあの時点で日本も核保有していれば起きていなかったかもしれない事ついては、どのように考えますか? 核保有しない事が全て! そうじゃ無いですよね・・・。

もちろん日本があの時に核武装していれば原爆投下もなかったかもしれません。
しかしそれは所詮仮定の話、そうなれば日本が他国を核攻撃していた仮定も成り立つわけですし、より不幸な結末となっていなかった保証は何もありません。
もっとも長距離飛べる飛行機もなく、そもそも使えたのか?という疑問もありますが…

「核抑止による平和」は、一時的には有効な場面がありえても、恒久平和の仕組みとしてはあまりにもリスクが高く、人類が目指すべき方向ではないというのがこの記事の主張です。
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